「アーバンナチュラル」

今月でオーセンティシティを発表して丸15年が経過することになります。

正直なところ、それほどまでに時間が経過しているようには感じにくいのですが、その時間が意味することは決して小さくないものと思われます。

当時これを開発することになり、そのコンセプトとして「アーバンナチュラル」を打ち出した頃の気持ちになってみようと思います。

先ずは、間違いなく日本一だと言える感動するくらいのウォルナット材や道産ミズナラ材との出会いがあったことを思い出します。

それら立派な材料は、その価値を製品にも充分表現することを条件として使うことを許され、それだけに相応にプレッシャーを感じていたことも確かです。

幅広で厚い立派な材料だけに、本来であればその価値を伝えるためにもあまりデザインを入れない方が良いのかもしれませんし、一般的にはそのように言われていたことも事実です。

それだけに、厚材でしか表現できないデザイン性を強く意識したのですが、厚いことはともすれば武骨に感じさせることにも繋がるため、そうならないように極力鋭角を用いることを心掛けたのです。

更に、製造先を選ぶギリギリの難しいデザイン性であることをあえて意識し、材料面とこの加工技術力が揃うことで唯一無二の存在になったものと考えています。

しかしながら思いっ切り遊び心を入れることや奇をてらう意識はまったくなく、基本は正統派であることがデザインテーマにもなっています。

家具は小さな建築物であるがごとく、外見だけではなくしっかりとした構造面に支えられている安心感も大事にするところです。

洗練された都会的な空間にもマッチするナチュラル無垢家具をコンセプトとして開発した経緯を大事にしながら、次なるステージに突入する必要性についても感じているところです。

「名作」

家具に興味を持つようになったきっかけとして、現代にも残る名作椅子の存在があったことは間違いありません。

それらのデザイン性の高さは言うまでもなく、最も驚かされたことはそれらが生み出された時代の古さにあります。

まったく古さを感じさせないと言いましょうか、それどころか最近開発されたものだと言われたとしても違和感を抱くこともなかったと思われます。

木材の曲げ加工から複雑な加工に至るまで、その技術力においても現在と大きく引けを取る部分を感じさせないところがあります。

その素材においても木材に限られることもなく、スティールパイプ等の鋼材を積極的に用いたことを感じさせます。

デザイン性の観点よりそれらを用いたことも考えられますが、木材だけでは難しかった強度面の問題よりそれらを用いる必要性に迫られたことも背景にあるのでしょう。

例えばカンティレバーと言われる片持ち式の構造は、木材だけで充分な強度を保持することは難しいものです。

何よりもその線の細さを強調したい場合においては既に木材では不可能ですので、スティールパイプ等を用いること以外に選択肢はなかったのでしょうし、必然として綺麗な曲げや鍍金の技術も開発されたものと思われます。

更に木材だけでは不可能だった「しなり」を利用して新たな領域の掛け心地を創り出したようにも感じます。

イタリアで少しばかり学んだ頃には、「デザイナーはつくりのことを知り過ぎることは好ましくない」と言われたことは今でも覚えており、その意味合いはその知識に縛られることによりまったく新たなデザインが生み出されないことにあると教わりました。

このような考え方は日本では否定的かもしれませんが、ある部分において必要なことかもしれませんし、その中から未来の名作が生まれるのかもしれません。

「マッチング」

上質な木材に最高の加工技術力を施したものからは、自然と高級感が醸し出されるものと思われます。

しかしながらそれが設置される場所によっては、その度合いに多少なりとも違いが生じるものとも思われます。

デザイン性とも密接な関係があり、例えば重厚感のあるものは相応に重々しい空間でなければその良さを100%引き出すことは難しいのかもしれません。

その反対もしかりで、特に木製家具においては設置される空間を選ぶ性質があるようです。

オーセンティシティにおいては、当初のイメージとしてコンクリート打ち放しの空間に設置しても違和感なく溶け込むことにあり、それはともすればウッディーになり過ぎる無垢材家具に対する挑戦でもありました。

そのためにもあえて積極的にデザインを施すことになり、バランス面を重視するためにも時には各々の材料から得られる最大厚をベースとする概念にも融通性を持たせました。

結果として、一般的に言われるようなモダンな空間であってもそうではない空間であっても、どちらにも相応にマッチする家具になったと考えています。

一方では、人の手が入り過ぎた綺麗すぎるつるんとしたモダン空間にはあまり馴染まないようにも感じています。

設置される場所を選ばないとの当初のイメージからも、そのことは何とか解消しなければいけないだろうとの気持ちがあり、いろいろと考えることが多くなっています。

既存品に手を加えることも選択肢のひとつですが、おそらくはそれだけでは難しいだろうとの考え方が強いことからも、新たなシリーズを生み出すことも視野に入れてイメージを膨らませたいとの気持ちです。

「専門性」

家具の分野においては、一部のアイテムに絞り込まれた専門店は決して多くありません。

その理由としては、いろいろな面で「それだけでは難しい」との背景があるものと思われます。

一部のアイテムに絞り込むことは当然のように一部の需要に絞り込むことになるため、ある意味リスクを伴うことになるでしょうし、結果として総合的なアイテムを扱うインテリアショップとしての形態になるのでしょう。

一方の見方では、専門店として展開するだけの差別化が難しいのだろうと思われますし、何よりも専門知識を有した専門店向けの人が絶対数として少ない可能性も否定できません。

比較的多いものとしては、アイテムに絞り込んだ形態ではなく、例えばヴィンテージ家具だけを再生/販売する専門店や、北欧等のあるテイストに絞り込みセレクトされた特色のあるショップがあります。

それらもその分野における専門店と言えるでしょうし、もしかすると一般ユーザーにとってみればその方が便利で楽しいのかもしれません。

専門店にて各種アイテムをひとつひとつ揃えていくことには相応に知識も必要になるでしょうし、全体としてのコーディネイト能力も欠くことは出来ません。

インテリアは家具だけではなくいろいろなものが集まって構成されるだけに、その各々において自らの力でショップを選定し、更に製品を選定することは現実的ではないのかもしれませんが、それゆえ専門家の力に頼ることが必要になるものと思われます。

しかしながら、本物の専門家を探すことはそれ以上に難しい現実があり、結果として現状があるのですから、何かを大きく変える必要があるのだろうとの気持ちです。

やはりそれに携わる人間の個々のスキルアップが大事になるでしょうし、そのことが分かりやすく見える環境にすることも専門店の務めのように感じます。

「真面目ブランド」

一時期は若干静かな状態にも感じていた海外家具ブランドですが、新たなブランド進出も含めて再度盛り上がりを見せているようです。

いずれも好調な様子で、やはりそれらは各々において日本のそれらとは違う独特な世界観を醸し出していることは否定できません。

それがブランドでしょうし、安心できる製品クオリティもさることながら、それらの世界観に惹きつけられる魅力があるのでしょう。

おそらくですが、伝統に裏打ちされた確かな技術力と時代に合わせて常に進化を続けている感性に恰好良さを覚えることになり、いつかはそれを保有したいとの欲求が湧き出るのだろうと思われます。

一方の国産ブランドにおいては、やはり家具の歴史面において若干のハンディがあるように感じますし、何よりも感性面においてどうしても及ばないところがあるのかもしれません。

このことは単に海外ブランドに対する憧れの感情と言うことではなく、冷静に比較しても否定することは難しいと言わざるを得ません。

歴史や感性の問題だと言ってしまえばそれまでなのですが、それではどのように自らの道を切り拓くことが望ましいのでしょうか。

第一に製品自体のクオリティ面を否定することは出来ず、これはブランディングの前に絶対的に必要な条件だと思われます。

しかしながら意外とこのことが軽視されていると言っても過言ではなく、うわべだけのブランディングが先行しているところも少なからず見受けられます。

即効性を狙うばかりに一時のブームで終わってしまうことも少なくないようで、結果として本物のブランドに成長することもないものと思われます。

やはり絶対的なクオリティを維持し続ける愚直なまでに真摯な姿勢を持った真面目なブランドであることが大事になりそうです。