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もうずいぶんと前になるのですが、私の学生時代においては、安価な家具はほんの一部に限られ、多くは相応な価格帯だったことを思い出します。

高額な輸入ブランド家具のことだけを指しているものではなく、ごく普通の身近な家具においても相応な品質とそれに見合った価格だったと思われます。

しっかりとしたハイクオリティ製品が多かったと言え、それだけに家具に対しての憧れも強く、結果としてこの業界に身を置くことになっています。

もちろん意味もなく高額だったものではなく、それ相応のクオリティが伴っていたことは確かで、それはその佇まいからも充分伝わるものがあります。

ところが、いつしか安価なものが市場にあふれるようになり、少なくともそれ以降に生まれ育った方々にとってはそれらが当たり前の価格帯として認識されることになったものと思われます。

結果として、ごく普通に良いものは高額過ぎるとの認識が芽生えてきたのかもしれませんし、そのこと自体はとても不幸なことのように感じます。

メーカーとして徹底的にコストダウンを図り、良いものを少しでも安く供給する努力は素晴らしいことなのですが、安く販売するためにクオリティを落とすようなことがあれば、それはまったくの本末転倒です。

これは家具に限ったことではないのかもしれませんが、結果として皮肉にも使い捨て文化が育まれてきたのかもしれません。

その代償として地球温暖化にも結び付いているとすれば、これは既に我々すべてがひとりの人間として真剣に考えなければいけない段階になっているものと思われます。

そのような分別のある人間を育て上げるためにも、決して贅沢との意味ではなく、相応の家具環境の中で子供たちを育てることが大事になるのだろうと考えています。

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