「家具専門店の存在」

「家具専門店の存在」

ここでは具体的な固有名詞を出すことは控えますが、依然は徹底した対面販売において高価格帯の家具を多く販売していた家具店が存在しました。

当時在籍していたソファメーカーではデザイン業務に限らず営業の補佐的なことも行っていましたので上記本社に赴くことも少なくなく、また週末においては一部に許されたメーカー販売要員として何度か売り場に立って接客も行っていたことを思い出します。

当時はそれこそ飛ぶ鳥を落とす勢いにて急成長していましたし、家具メーカーとすれば高額品でも相応の販売実績を作ってもらえる会社との取引には積極的だったことからも、それゆえの双方の関係性は容易に想像できるものと思われます。

少しばかり乱暴な表現になりますが、「売ってやってるんだから…」との基本姿勢となることからもメーカーサイドの立場はとても弱く、時には無理な難題を突き付けられたこともあります。

ビジネスゆえ納入価格面の交渉は当たり前のことかもしれませんが、デザインにおいて取引が出来ないイタリア有名メーカー製品の模倣もほのめかされたこともあります。

そのような状況からも個人的にはその会社名を聞くだけでも抵抗がありましたし、そのような環境から抜け出すべく真剣に転職を考え実際動いていたことも記憶に新しいものです。

ところが、自社開発の安価な製品群にて勢力を拡大してきた会社とは対抗することも出来ず、実質的に姿を消すことになったことは複雑な気持ちです。

率直なところ当時は好きではなかったのですが、その家具店にて購入したことをステイタスに感じるような対応を行っていたことは事実ですので、そのこと自体は悪いことではなかったのかもしれません。

今後同様な手法にて一世を風靡するような家具店を構築することは難しいかもしれませんが、ブランド力に限らず本物の家具を手に入れることに喜びや満足感を与えることが可能な家具専門店の存在は必要だろうと感じています。

「必需品」

値上げの波は食料品類においても例外ではなく、日々ニュースになっているような印象を受けます。

それらの多くは生活に直結する必需品中の必需品とも言えるからでしょうし、それゆえ値上げにより購入を控えることも難しいことからもやはり消費者にとって決して好ましいこととは言えないのでしょう。

一方の製造等の製品供給側にしてみれば、止むを得ず値上げに踏み切る必要に迫られている現実も見えてきます。

すべてと言っても過言ではないくらいに原材料費が高騰しているようですし、それらを運ぶ物流費についても例外なく高騰していることはニュースでもしばしば耳にしてきたものです。

その要因についても冷静に考えれば充分理解できることばかりで、企業努力だけでは吸収しきれない部分が多々あるようにも感じられます。

しかしながら、そのような状況下においても決して必需品とまでは言えない高額品が売れなくなっているものでもないとも思われます。

当然のように予定されていた買い替え等になれば変更することは難しいかもしれませんし、そのために各種計画を立ててきたこともあるのでしょう。

家具においてはどうでしょうか。

新築等による引っ越しに伴うタイミングであれば購入を先延ばしにすることは難しいことからも、そうなると価格的にもメリハリを付けた選択になるものと思われます。

それが買い替えになれば「まだいいか…」と先延ばしにされる可能性も感じられますが、いずれにおいても必需品と思われるくらいの位置付けになることが大事でしょうし、決して贅沢との意味合いではなく生活の質を上げる意味において家具はとても重要との認識を広めることが出来る開発が必要になるだろうと思われます。

「継承」

おそらくですが、ソファと言えばいわゆる応接セットと呼ばれた時代より張地にてすべての表面が覆われた張りぐるみタイプの方が一般的だと思われます。

それも以前はボディ部分が張り込みと言われる仕様で、劣化等によりその部分の表皮材を交換するためには工場に戻して作業する必要がありました。

そのタイミングにて内部ウレタン等の一部中材交換を行うことも一般的で、それにより新品同等に綺麗な状態に戻るものの、それに掛かる費用は新品価格同等と言っても過言ではないことからも、そのデザイン性には相応にこだわりを持っていることが条件になるものと思われます。

もしくはそのデザイン性を継承する必要がある空間に設置されているものと思われ、似て非なるものを新たに製造するのではなく古いものを修理しながら使い続けてきた背景があるのでしょう。

この精神はとても大事なことだとも思われ、単にモノを大切に使うとの意識面だけではなく文化を継承する意味において「古きよきもの」との感覚は大切にしたいとも考えます。

一方では、これにとらわれ過ぎることも如何なものか…とも思われ、どこかにそのテイストを残しつつも今の時代にマッチしたものを新たに創り出す精神もまた必要なのだろうとも思います。

そのようなマインドは短期間ですがイタリアで学んだ際に実感として身につけた感覚もあり、自身の感性を磨くためにもとても重要な期間だったことは間違いありません。

そのタイミングとしても、若すぎることもなく悪い意味でいろいろと凝り固まってしまう年齢でもなく、丁度良いタイミングだったとつくづく思います。

もちろんイタリア文化がすべてではないものの、ソファ先進国と言っても間違いはないと思われる体験をいろいろと積み重ねてきましたので、その歴史とマインドは良い意味で受け継いでいければと思っています。

「表皮材選定」

ソファの座り心地は表皮材によっても若干感覚が違ってきます。

分かりやすいところではレザー(本革)を用いた場合とファブリック(織物)を用いた場合があり、前者はそれ自体のしっかり感からも後者と比較すると若干しっかりとした印象になります。

当然のようにクッション性を表現するためにはある程度の沈み込みが必要になり、必然的に内部の空気を外に逃がす必要もあります。

レザーの場合は吸湿性に優れてもそれ自体の通気性には期待できないため、例えば座クッションの底面や背クッションの裏側の一部は通気性が良い生地とする場合が大半です。

視覚的な観点より見えない部分にて抜くことが前提となりますので、例えば背クッションの裏側も見えてしまうようなウッドフレームタイプソファの場合はそれも難しいものです。

設置場所が定まることがない方向性のないピロークッション等の場合も同様となり、その場合は目立たないように空気孔となるようなメッシュ鳩目を用いたり、細かな孔を空けたパンチングレザーを用いたりすることになります。

一方のファブリックにおいては、それ自体に充分な通気性が備わっていることからも全体的にそして均等に空気が抜けていきますので、スムーズで自然なクッション性になるものです。

また多くのファブリックはレザーよりもやわらかいこともありドレープ性に優れますので、内部クッション材と一体感のある見え方にもなります。

更には、その組成面からも種類が豊富なもので、その点において選択肢の幅もかなり広いことが最大の特徴になるでしょう。

一方、レザーにて張り上げたソファには良い意味での緊張感や独特な高級感も生まれますので、そこに求める居心地について具体的にイメージすることにより表皮材選定にも厚みが増すものと思われます。

「one of them」

多くのインテリアショップはいろいろなメーカー製品を扱っています。

オーナーやバイヤーが厳選した、いわゆるセレクトショップとなることからも、ある意味面白味があるのかもしれません。

一方のメーカー直営店となると、それが総合家具メーカーであれば一通りのアイテムも揃うものの、必然的に統一感のあるテイストとなることからもある意味客層は絞り込まれる可能性があります。

固定客を大事にする姿勢とは別に新規客開拓も必要になりますので、時代に合わせた万人受けしそうなデザイン性や使用性にこだわり続けているものと思われ、またその多くの実績からも安心感を与え続けているものと思われます。

古くより「家具は○○〇」のように思い浮かべる方々も少なくないでしょうし、それがブランドですので否定することもありません。

それらとはある意味対極にあるかもしれないアイテムが絞り込まれたメーカー直営店の場合は、当然のように○○専門店との位置付けになります。

専門性が高いその形態はメリットもあるでしょうが、すべてが揃わない点においてデメリットにもなり得るでしょうし、そのような多くの販売店を吟味したうえで足を運ばれるのでしょう。

例えばソファにおいて、多くのセレクトショップの場合はメーカーを絞り込むことなく各々のメーカー製品の中で売れ筋と言われるものを中心にランナップするものと思われます。

このように立場やそれゆえの視点が大きく違いますので、メーカーサイドからすれば所詮自社製品は「one of them」の位置付けになってしまいます。

また、一般的には価格帯の幅も広いことからも専門性の高さを表現することは難しいとも感じられますので、今後はメーカーが表に出て各々の専門性や大きな方向性を明確にアピールすることが大事になるものと思われます。